12 課題設定型営業 / 補助金営業での実践
「この製品なら補助金が使えます」で終わらせない補助金営業
見るのは工場ではなく営業構造である。「補助金が使えます」だけでは決め手にならない。公開情報から立てる8つの仮説と、顧客の一言をそのまま受け取らないための対応表。

最終回は、自社の製品やサービスを補助金と組み合わせて提案している企業の営業現場に、この考え方を応用します。
見るのは、工場ではなく「営業構造」
まず前提を整理します。補助金を営業に組み込むとき、向き合う相手は誰でしょうか。
エンドユーザー(工場や店舗)に直接投資を提案するのは、設備メーカー・商社・IT企業といったクライアント企業の営業です。補助金ポータルが支援するのは、その営業活動そのものです。
したがって商談で向き合う課題は「どの設備を提案すべきか」ではありません。「この会社は、なぜ補助金を営業に活かし切れていないのか」「営業成果を上げるために、どの仕組みが不足しているのか」です。
補助金は「使えます」だけでは決め手にならない
「この製品なら補助金が使えます」。この一言は確かに顧客の関心を引きます。しかし関心を引くことと、決まることは別です。
補助金は導入を決めた後の話だからです。そもそもその投資をするかどうかが決まっていない状態で補助率の話をしても、判断材料は増えません。
| 情報提供型の営業 | 課題設定型の営業 | |
|---|---|---|
| 商談の起点 | 「使える補助金情報をお届けします」 | 「この会社の営業の、どこが目詰まりしているのか」という仮説 |
| 顧客の言葉への反応 | 「一覧が欲しい」→ 一覧を渡す | 「一覧が欲しい」→ なぜ一覧なのか、誰がどう使うのかを考える |
| 見ているもの | 制度・公募スケジュール | 商材・販路・営業体制・KPI・情報共有の仕組み |
| 提案の中身 | 情報提供サービスの説明 | 営業課題を整理した上での、仕組みの提案 |
| 比較のされ方 | 他の情報サービスとの価格比較 | 「営業課題を一緒に考えるパートナー」として |
ホームページから読める事実だけで、仮説はここまで立つ
第4回で扱った「仮説の材料」を、この商談に当てはめます。公開情報から次の事実が読めたとします。
高額な設備を扱っている/複数業界へ販売している/展示会へ継続的に出展/営業担当者が多い/導入事例はあるが補助金活用事例の掲載なし/代理店網を持っている。
ここから、次の仮説を並走させます。
- 補助金を使える案件は発生しているが、社内で把握できていないのでは
- 営業担当者ごとに、補助金対応の品質がばらついているのでは
- 補助金情報を渡しても、具体的な提案に変換できていないのでは
- 展示会後の追客で、補助金を活用できていないのでは
- 代理店への営業支援策が不足しているのでは
- 案件相談が、特定の人に依存して属人的になっているのでは
- 補助金活用による売上・受注件数を可視化できていないのでは
- 制度情報はあっても、営業プロセスに組み込まれていないのでは
どの仮説から検証するかが、そのまま初回商談の質問設計になります。
顧客の一言を、そのまま受け取らない
実際の商談で頻出する発言を、表面的な受け取り方と並べます。
| 顧客の発言 | 表面的な受け取り方 | 立てるべき仮説の例 |
|---|---|---|
| 「聞かれた時だけ調べています」 | 受け身だが対応はできている会社 | 聞かれない案件で機会損失が起きているのでは |
| 「覚えさせるのは難しい」 | 教育サービスの提案チャンス | そもそも「覚える」必要がある設計なのでは |
| 「配信したが使われなかった」 | この会社に情報配信は効かない | 制度単位で、商談単位に翻訳されていなかったのでは |
| 「補助金案件は把握していない」 | 補助金ニーズがない会社 | 「ない」のではなく「見えない」だけでは |
| 「まずは一覧だけ欲しい」 | 情報要望。一覧を渡して終わり | その一覧は、誰がどんな場面で使う予定なのか |
反射的な対応は、第1回で扱った御用聞き型そのものです。営業できる人は即答しません。1つの発言に対して頭の中で3〜4個の仮説を立て、それぞれに「確かめたい事実」を紐づけ、検証する問いを選んでいます。
私たちが売るのは、補助金情報ではない
第1部の普遍的な営業思想と、補助金営業の実践は一本につながっています。
- 営業とは課題を設定する仕事である → 「補助金を使いたい」をそのまま受け取らず、その会社の営業活動に何が不足しているかを考える
- 仮説 → 質問 → 事実 → 仮説更新 → 営業構造の仮説を立て、質問で検証し、目詰まりの真因を特定する
- 商品は課題設定の「後」に意味を持つ → 私たちのサービスは、営業課題が言語化された「後」に初めて意味を持つ
- 営業は個人戦ではなく組織戦である → 商談の学びをレビューし、ナレッジ化し、営業OSとして全員で共有・更新する
売るのは補助金情報ではなく、補助金を活用して営業成果を生み出す仕組みです。営業体制の構築、営業教育、商材と補助金の整理、提案資料、案件相談、セミナー、申請支援体制 ― その全体です。
まとめ
明日の商談の前に、そのクライアント企業の営業構造について仮説を3つ書くことから始めてみてください。「補助金を使いたい」という言葉の裏で、この会社の営業の何が詰まっているのか。
その問いを持って商談に臨んだ瞬間、情報提供会社ではなく、営業課題のパートナーになります。全12回、お読みいただきありがとうございました。
課題設定型営業の型
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