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11 課題設定型営業 / 補助金営業での実践

事例:10社の商談で、最初の仮説はことごとくズレていた

補助金ポータルが向き合った10社の商談から4件を抜粋。最初に立てた仮説は半分以上ズレていた。そして課題設定の後には必ず選択肢の比較があり、「提案しない」ことも判断だった。

製造現場で設備を前に話し合う工場責任者とコンサルタント

ここまで扱ってきた思考が、実際の商談でどう働くのか。補助金ポータルが向き合った10社の商談から、共通して起きていたことを取り上げます。

先に結論を書きます。最初に立てた仮説は、半分以上ズレていました。

CASE 01|設備メーカー ―「営業が補助金の話をできない」

発言:「うちの営業は、補助金の話ができないんですよ。」

  • 仮説①:知識不足では。教育を強化すれば話せるようになるのでは
  • 事実確認:過去の教育歴を確認 → 制度研修を2回実施済み。仮説①はズレ。教育しても変わっていない
  • 仮説②+質問:「覚える」前提の設計が問題では。/「商談で補助金が話題になった時、営業の方は次に何をしますか?」
  • 真因:気づいた後に「つなぐ先」がなく、営業が自力で調べて挫折していた。知識ではなく体制の問題
  • 課題設定:教育の強化ではなく、「気づく→つなぐ→任せる」役割分担の構築

ここで営業がしたのは、選択肢の比較です。制度研修の再実施(過去2回で効果なし)、補助金一覧の提供(つなぐ先がなければ使われない)、相談窓口+商材マップ+最小限の教育(真因を直接解消)。求められた研修の再実施は、理由を添えて提案しませんでした。

CASE 02|商社 ―「商材が多すぎて整理できない」

発言:「扱う商材が多すぎて、どれに何の補助金が使えるのか分かりません。」

  • 仮説①:全商材×全制度の対応表を作れば解決するのでは
  • 事実確認:商材数と売上構成を確認 → 商材約3,000点、ただし売上の7割は上位30商材。全網羅は不要と判明
  • 仮説②+質問:重点商材に絞れば十分では。/「今期、会社として最も伸ばしたい商材はどれですか?」
  • 真因:「全部整理しなければ」という思い込みが、着手そのものを止めていた
  • 課題設定:網羅ではなく、重点商材×主要業界×制度の優先順位マップ

フルパッケージは提案せず、重点30商材からの段階整備だけを小さく提案しています。最小の工数で売上の7割をカバーできるからです。

CASE 07|高額設備メーカー ―「効果が分からない」

発言:「補助金がどれだけ受注に効いているのか、正直分かりません。」

  • 仮説①:効果測定のツールやレポートを導入すれば解決するのでは
  • 事実確認:案件管理の項目を確認 → 補助金の記録項目自体がなく、過去データが存在しない。測定以前の問題
  • 仮説②+質問:まず記録の仕組みからでは。/「受注案件のうち、お客様が補助金を使われた割合は記録に残っていますか?」
  • 真因:記録がないため、効果も語れず、投資判断も改善もできない状態だった
  • 課題設定:補助金関与の可視化と、営業KPIへの接続。測れないものは改善できない

まず3ヶ月の実態可視化だけを提案し、フル支援は「数字が見えてから、お客様自身に判断してもらう」段取りに設計しています。

CASE 10|既に補助金対応をしている企業 ―「◯◯さんが全部やってくれる」

発言:「補助金対応は、ベテランの◯◯さんが全部やってくれています。」

  • 仮説①:体制に満足しており、こちらの提案余地はないのでは
  • 事実確認:その方の状況と文書化を確認 → 2年後に定年。対応フローの文書化はゼロ。「問題なし」の仮説はズレ
  • 仮説②+質問:継続性こそ課題では。/「もし◯◯さんが1ヶ月不在だったら、動いている案件の対応はどうなりますか?」→「…止まりますね」
  • 真因:個人の力が仕組み化されておらず、強みがそのまま事業リスクになっていた
  • 課題設定:属人対応から、人が替わっても続く仕組みへの転換

本人の役割を尊重し、「今すぐの全面移管」はあえて提案しない、という判断をしています。

10社に共通していた、1つの思考

取り上げた4件を含む10社すべてに、同じ構造がありました。

  1. 最初の仮説は、半分以上ズレていた。教育不足、情報の質、事例の不足 ― もっともらしい仮説①は、事実確認でことごとく修正された。ズレを恐れず検証したから、真因に届いた
  2. 課題設定の後に、必ず選択肢を比較していた。研修か、一覧か、窓口か、見送りか。営業は「商品を当てる」のではなく、複数の選択肢を顧客の真因に照らして比較し、最適を選んでいた
  3. 「提案しない」ことも、営業の判断だった。求められた研修を断る。フル導入を勧めない。今回は小さく始める

3つ目が、この仕事のいちばん難しいところです。顧客が求めたものをそのまま売れば、その場は決まります。しかし真因に届いていなければ、成果は出ません。

まとめ

10社の商談で、最初の仮説はことごとくズレました。しかしズレたからこそ真因に届いています。仮説は当てるためではなく、ズレを検知するために立てるものです。

最終回は、この思考を補助金を絡めた営業全体にどう組み込むかを扱います。

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